
予知保全と予防保全の違いとは?
混同されやすい設備保全の考え方を分かりやすく解説
予知保全と予防保全の違いをご存じですか?
設備保全にはさまざまな考え方がありますが、それぞれの違いを正しく説明するのは意外と難しいものです。
本記事では、事後保全・予防保全・予知保全の違いや特徴、それぞれのメリット・課題、近年注目されるAI活用について分かりやすく解説します。
設備保全には主に3つの考え方がある
設備保全とは、設備を安全かつ安定して稼働させるために、点検や修理、部品交換などを行う活動です。
その中でも代表的な保全方法として、
- 事後保全
- 予防保全
- 予知保全
があります。
それぞれ、保全を実施するタイミングや判断方法が異なります。
まずは、それぞれの特徴を見てみましょう。

事後保全とは
事後保全とは、設備に故障や異常が発生した後に、修理や部品交換などの対応を行う方法です。
設備が故障してから対応するため、計画的な保全活動を必要としない設備では、比較的シンプルに運用できます。
一方で、重要な設備や停止による影響が大きい設備では、突発的な故障によって生産に大きな影響が出る可能性があります。
事後保全のメリット
- 保全計画を立てる負担を抑えやすい
- 管理方法が比較的シンプル
- 故障するまで部品を使用できる
事後保全の課題
- 突発的な設備停止につながる可能性がある
- 生産への影響が大きくなる場合がある
- 緊急対応によって保全担当者の負担が増える場合がある
設備の重要度や故障時の影響によっては、あえて事後保全を選択することもあります。
予防保全とは
予防保全とは、設備の故障や機能低下を防ぐために、あらかじめ計画を立てて点検や部品交換などを行う方法です。
代表的なものとして、
「一定期間ごとに部品を交換する」
「定期的に設備を点検する」
といった取り組みがあります。
設備の使用時間や運転回数などを基準に保全を行う方法もあり、あらかじめ保全時期を計画しやすいことが特徴です。
予防保全のメリット
- 計画的に保全活動を実施できる
- 突発的な故障リスクの低減につながる
- 必要な部品や人員を事前に準備しやすい
予防保全の課題
- 劣化していない部品を交換する場合がある
- 過剰な点検や部品交換につながる可能性がある
- 設備ごとの実際の状態を十分に反映できない場合がある
例えば、同じ部品を同じ期間使用していても、設備の稼働条件や使用環境によって劣化の進み方は異なる場合があります。
そのため、あらかじめ決めた周期だけでは、実際の設備状態との間に差が生じることがあります。
予知保全とは
予知保全とは、設備の状態を継続的に監視し、その変化や異常の兆候を把握しながら、保全のタイミングを判断する方法です。
設備の稼働時間だけで判断するのではなく、
「設備が現在どのような状態なのか」
「普段と比べてどのような変化が起きているのか」
といった情報をもとに保全を行うことが特徴です。
例えば、
- 振動
- 温度
- 音
- 電流値
- 圧力
などのデータを継続的に取得し、設備状態の変化を確認する方法があります。
予知保全のメリット
- 設備状態に応じて保全時期を判断しやすくなる
- 異常の兆候を早期に把握できる可能性がある
- 不要な点検や部品交換の削減につながる場合がある
- 設備状態をデータとして把握しやすくなる
予知保全の課題
- データを収集・監視する仕組みが必要
- 設備ごとに適切な監視項目を検討する必要がある
- データの分析や運用に関するノウハウが求められる
- センサーやシステムなどの導入が必要になる場合がある
予知保全では、単にデータを取得するだけでは十分ではありません。
「何を監視するのか」「どのような変化を異常の兆候と判断するのか」を整理することも重要です。
予防保全と予知保全の違いとは
違いは「保全のタイミングを何で判断するか」
ここまでの内容を整理すると、予防保全と予知保全の大きな違いは、保全のタイミングを何を基準に判断するかにあります。
予防保全では、設備の使用時間や運転回数、あらかじめ設定した周期などを基準に、計画的に点検や部品交換を行います。
一方、予知保全では、振動や温度などの設備状態を把握し、その変化をもとに保全のタイミングを判断します。
保全手法の比較表
保全方法 | 主な判断基準 | 特徴 |
事後保全 | 故障・異常の発生 | 故障後に修理・交換を行う |
予防保全 | 時間・運転回数・計画など | あらかじめ決めたタイミングで保全する |
予知保全 | 設備の状態・状態変化 | データなどから設備状態を把握し、保全時期を判断する |
ただし、実際の製造現場では、これらを明確に分けて運用する必要があるとは限りません。
設備の重要度や故障時の影響、保全コストなどに応じて、複数の方法を組み合わせることも重要です。
なぜ今、予知保全が注目されているのか
近年、製造業ではさまざまな課題が顕在化しています。
例えば、
- 熟練人材の不足
- 技術継承の課題
- 設備の老朽化
- 保全担当者の負担増加
などです。
これまで設備保全では、ベテラン担当者の経験や知識が重要な役割を果たしてきました。
例えば、
「いつもと音が違う」
「少し振動が大きい」
といった小さな変化を経験から判断し、設備の異常を発見することがあります。
しかし、こうした判断を個人の経験だけに頼り続けることには、属人化や技術継承といった課題があります。
そこで、設備状態をデータとして記録・分析し、担当者が設備の変化を把握しやすくする仕組みが注目されています。
こうした背景の一つとして、予知保全への関心が高まっています。
AIを活用した予知保全も進化している
予知保全というと、
「AIが設備の故障日を予測する技術」
というイメージを持たれる方もいるかもしれません。
しかし、AIを活用した予知保全の目的は、必ずしも故障する日時を正確に予測することだけではありません。
設備から取得したデータを分析し、通常時とは異なる状態や変化を検知することも、AI活用の重要な方法の一つです。
例えば、設備の振動データを継続的に収集し、
- FFT(高速フーリエ変換)などによる周波数分析
- 統計的な分析
- 機械学習
- ディープラーニング
などを活用することで、人が確認するだけでは気付きにくい変化を検知できる可能性があります。
これまで熟練担当者が、
「いつもと音が違う」
「少し振動が大きい気がする」
と経験的に判断していた設備状態を、データによって定量的に把握することにもつながります。
また、
- 振動
- 温度
- 音
- 電流
- 微粒子
など、複数のデータを組み合わせて分析することで、設備状態を多角的に把握する取り組みも考えられます。
ただし、AIを導入すれば自動的に異常を発見できるわけではありません。
設備ごとに適切なデータを取得し、正常時の状態や異常時の特徴を把握したうえで、現場で活用できる仕組みを構築することが重要です。
重要なのは「予知保全」か「予防保全」かではない
予防保全と予知保全は、必ずしもどちらか一方だけを選択するものではありません。
設備の重要度や稼働状況、故障した場合の影響、保全にかけられるコストなどによって、適した方法は異なります。
例えば、
- 一定周期での交換が適している設備
- 定期点検を中心に管理する設備
- 状態を継続的に監視する必要がある設備
など、設備によって保全方法を使い分けることが考えられます。
重要なのは、
「予防保全と予知保全のどちらが優れているか」ではなく、自社設備の特性に応じて適切な保全方法を組み合わせることです。
そして、その判断を支えるためには、設備の稼働状況や故障履歴、点検結果、設備状態などを把握できる環境づくりが欠かせません。
まとめ|予防保全と予知保全の違いを理解して設備保全に活かす
予防保全は、設備の使用時間や運転回数、あらかじめ設定した周期などを基準として、計画的に点検や部品交換を行う考え方です。
一方、予知保全は、設備の状態やその変化を把握し、状態に応じて保全のタイミングを判断する考え方です。
また、事後保全を含め、これらの保全方法にはそれぞれ特徴があります。
近年はセンサーやデータ分析、AI技術の活用によって、設備状態をより詳細に把握しながら保全活動を行うことも可能になってきました。
重要なのは、特定の保全方法にこだわることではありません。
自社設備の重要度や稼働状況、故障時の影響などを踏まえ、設備ごとに適した保全方法を検討することです。
その第一歩として、まずは自社設備の故障履歴や点検方法、取得できている設備データなどを整理し、どのような保全方法が適しているのかを検討してみてはいかがでしょうか。
