株式会社ソアー 様
TECHNO-FRONTIER 2025 セミナー
精密機器工場における人と設備のIoT戦略  ダイジェスト                

山形県米沢市に拠点を置く株式会社ソアーは、OLED(有機EL)創世記から技術進化を牽引してきた企業です。OLEDデバイスを中心に、表示器の設計・受託製造を含む3つの事業を展開し、生産現場では日夜1,800台を超える設備・機器が稼働しています。

2025年7月24日、東京ビッグサイトで開催された「TECHNO-FRONTIER」出展者セミナーに登壇した代表取締役兼社長執行役員 八巻雅敏氏は、こうした精密機器工場が抱える課題と、CollaboViewを活用したIoT予知保全の実証実験について講演。

満員御礼となった会場で、工場DXの未来を語りました。

お客様が抱えている課題

●予防保守では防ぎきれない設備故障が発生する
●定期点検による不必要な部品交換やコストが増大する
●ベテラン技術者の減少により、経験に頼った対応が困難になる 
 → 1,800台を超える設備・機器の稼働を従来のやり方(メーカーや熟練者頼み)だけで維持するのは限界に近づいていた

導入による期待効果

●予防保守では防げない故障も未然に防止可能に
●定期点検による不必要な部品交換やコストを大幅削減
●予知保全を高精度化し、より少ない人員で効率的に対応
→ IT/AI技術の活用により、年間約1.8億円の保守コスト削減と人員3名の省力化を実現

痛感した予知保全の必要性

ソアーの敷地は隣接するサクサテクノ(グループ企業)の拠点も含めるとおよそ15万㎡。そこに工場系(インフラ設備関連)と生産系(生産設備関連)の機器が集約されています。東京ドーム3.5個分というこの広大な工場の敷地を毎朝30分以上かけて散歩する八巻社長は、ある日、18年前に設置しそれまで不具合なく稼働していた工場設備のファンの音が普段とわずかに異なることに気づきます。すぐにメンテナンス担当者に尋ねましたが、その際の回答は「異常なし」でした。ところが、1週間後にその設備が故障し大きな損害が発生。最初の確認時に部品の取り替えをしていれば数万円のコストで収まったものが、生産フロー全体に影響を与えた結果、数百万円もの損失を被りました。
この苦い教訓から、従来の「予防保全」やベテラン技術者の経験に頼る在り方ではなく、「予知保全」の確立が必要との思いに至ります。そこで協業を進めていたSCSKに相談し、CollaboViewを使った実証実験に取り組むことを決定。停電や災害発生時も確実に自動監視する仕組みが構築可能で、かつ多様なセンサーを扱える、さらにAI学習による生産プロセス改善モデルの構築も可能といった特長を高く評価したものです。
それではまず「予知保全」とは何かについて、改めて保全活動全般との位置づけを基に簡単にご説明します。

 

 

設備保全には、設備メーカーとの契約に基づき定期的に点検・交換を行う「予防保全」と、故障発生後に修理対応する「事後保全」が一般的です。
しかし、前者は不必要な部品交換や人件費の増大につながり、後者は生産ライン全体への影響が大きく、いずれも高コストになるという課題があります。
一方、自社で障害発生の兆候を検知して対応する「予知保全」であれば、こうした無駄を省き、効率的で合理的な保全が可能となります。
ただし、その実現には、24時間365日の安定したデータ収集と分析に加え、アラート発出時に迅速かつ的確に対応できる体制づくりが欠かせません。

 

CollaboViewを使った実証実験の概要

~対象機器は1800台以上~
今回の実証実験の対象は設備機器は計約1,800台(工場系約300台、生産系約1500台)、その投資額は計130億円に上ります。機器は多種多様ですが「工場系設備に含まれる4台の発電機は、例えば落雷が原因でコンマ数秒の瞬停(瞬間的な停電)発生すると真空装置内の素材が全て使えなくなるといった被害想定からくる対策。生産系でも蒸着機が1台故障すれば品質、コスト、デリバリーなど生産フロー全体に大きな影響を及ぼすことになる」(八巻社長)と、いずれも欠かせないものです。
このように複雑に連関する機器の予知保全を、IoTテクノロジーを活かしながらどう実現するかが検討ポイントとなります。
 

 

~設置センサーは3種類~
実験において設置したセンサーは主に「振動」「微粒子」「温湿度」の3種類です。微粒子センサーはクリーンルーム内の空気中の粒子を監視し、温湿度センサーは有機EL製造において致命的な影響を及ぼす湿度管理のために欠かせません。
ただし、八巻社長が「最も重要」と強調するのは振動センサーです。ベアリングの摩耗やモーターのアンバランスといった兆候は、異音や温度上昇が現れる前に微妙な振動として検知されるため、精度が高く即応性のある手法といえます。 


<設置したセンサーおよび中継機>

 

 

~AI分析によるモデル構築も視野に~
こうした設備環境のデータを継続的に収集・分析することで、次の効果が期待されています。
 1.振動データを活用し、故障の兆候を早期にキャッチすることで「予知保全」を実現
 2.自社内でのメンテナンス体制を強化し、人材育成にもつなげる
さらに、この取り組みによりQCD(品質・コスト・納期)の安定化が可能になると考えています。 その先には、実証実験で得られる振動センサーのデータを蓄積し、SCSKのAI分析に活用することで、生産プロセス改善の学習モデルを構築する計画も進行中です。現在はセンシングデータの取り込みも着実に進めています。

 

3次元ビューアーのサンプル


毎年1.8億円の保守コスト削減効果を予測

実証実験はこれから本格化する段階ですが、従来の「予防保全」では防ぎきれなかった故障や、不必要な部品交換・人員増によるコスト増大を防げる点で、大きな改善が期待されています。具体的な削減効果については、既にシミュレーションによる効果試算も行われ、次のように予測しています。
「当工場のファシリティ責任者と生産技術者がそれぞれ事前に試算した結果、メーカー推奨の予防保全と比べて年間約1.8億円(工場系0.83億円、生産系0.97億円)のコスト削減が可能と判断しています。これは設備投資額130億円の約1.4%に相当し、毎年継続的に削減できる見込みです。また、人員面でも工場系で1名、生産系で2名の削減が可能と想定しています」(八巻社長)。
全てが計画通りに進むことが前提ではあるものの、極めて大きな削減効果が見込まれます。 

 

 


SCSKとの更なる協業を通じ社会貢献

SCSKとの協業という点では、このほか、国土交通省が実施する「ワンコイン浸水センサ実証実験」にも参画しており、同工場を含むサクサグループ敷地内約900mに浸水センサを設置。米沢八幡原中核工業団地内の水害リスクを「見える化」する事業を進め、地域連携と社会貢献に寄与しています。
このようにソアーでは、CollaboViewを活用した人と設備のIoTによる予知保全の確立、ワクワクするものづくり、さらに地域防災への貢献を通じて、より良い社会の実現を目指し日々取り組んでいます。

お客様のプロフィール

会社名:株式会社ソアー

所在地:山形県米沢市

従業員数:200名(2025年4月1日時点)

主な事業:OLED(有機EL)デバイス(ディスプレイ/特殊光源等)
      開発・製造受託(ODM/EMS)
      ディスプレイソリューション

会社URL:https://www.soar-tech.co.jp/

 

代表取締役 兼 社長執行役員 八巻 雅敏 氏

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