製造業の世界を変革する工場のIoT化 そのメリットと課題とは
近年、製造業の世界ではIoT技術の導入による工場のIoT化の波が押し寄せています。日本国内においても、2017年5月31日に経済産業省が「スマートファクトリーロードマップ」を公開するなど、IoT技術の導入による「ものづくりのスマート化」の重要性が叫ばれています。ここでは、いまさら訊けない工場のIoT化について、その概要およびメリットや課題について紹介します。
目次[非表示]
- 1.工場のIoT化とは
- 2.工場のIoT化が求められる理由
- 3.工場のIoT化で実現できること
- 3.1.①リアルタイムモニタリングによる稼働状況の把握
- 3.2.②画像解析による品質管理
- 3.3.③設備のデータを収集して予兆保全を実現
- 3.4.④在庫管理と備品管理の効率化
- 3.5.⑤労働環境の向上と安全管理
- 3.6.⑥生産ラインの最適化
- 4.工場のIoT化を実現するために解消すべき課題
- 4.1.①初期投資および維持管理にかかるコスト
- 4.2.②IoT(IT)の知識をもつ人材の不足
- 4.3.③セキュリティリスクへの懸念
- 5.「まずはやってみる!」お手軽IoTのススメ
工場のIoT化とは
工場のIoT化とは、モノをインターネットでつなぐIoT(Internet of Things)技術を用いて工場内の設備や機器の情報を可視化して分析し、業務効率の改善や生産性向上を目指すことです。工場のIoT化に注目が集まったきっかけは、2011年にドイツ政府が発表したインダストリー4.0と言われています。
工場のIoT化が求められる理由
工場のIoT化の波はドイツから欧州全体に広がり、今では世界全体へと拡大しています。グローバル化が進む中で競争力を維持するためには、日本の製造業もこの流れに乗る必要があります。また、少子高齢化の進む日本では将来の労働力不足に備え、工場のIoT化による業務効率化や生産性の向上がますます求められていくでしょう。
工場のIoT化で実現できること
では、工場のIoT化によって何が実現できるのか、具体例を6つ紹介します。
①リアルタイムモニタリングによる稼働状況の把握
設備にセンサーなどのIoTデバイスを設置してデータを収集。稼働状況をリアルタイムでモニタリングします。高温・騒音・粉塵などで人が容易に立ち入れない環境にある設備についても、離れた場所から稼働状況の把握が可能です。設備の状態を確認するための巡回や、検査のために稼働を停止する頻度が減り、人件費削減や業務効率化が期待できます。
②画像解析による品質管理
画像センサーから製品の形や寸法などの情報を収集して画像解析による一次検品を行い、不良品の早期検出や品質向上につなげます。また、人の目に頼る検品から脱却して、品質管理業務の属人化を防ぎます。
③設備のデータを収集して予兆保全を実現
設備に設置したIoTデバイスからリアルタイムの情報を収集。異音の発生、電力の低下などから異常を予測して、早期のメンテナンスを実施します。設備の故障による業務停止リスクを低減すると同時に、設備の寿命も伸ばします。
④在庫管理と備品管理の効率化
製品に低コストのIoTタグを取り付け、位置情報を収集します。在庫のリアルタイム追跡が可能となり、在庫不足や過剰在庫のリスクを低減します。また、台車、工具、端末など、業務に欠かせない備品にタグを取り付け、場所をリアルタイムで可視化。備品を探す手間をなくすと同時に管理の簡略化も実現します。
⑤労働環境の向上と安全管理
温度センサーから作業場の気温や湿度の状態を把握。作業員が熱中症にかかるリスクを低減します。また、危険な場所への立ち入りが発覚した場合にはアラートを表示して、事故の発生を防ぎ作業員の安全を守ります。
⑥生産ラインの最適化
設備に設置したセンサーから、稼働状況や製造ラインの流れを可視化します。ラインがスムーズに流れている箇所と滞っている箇所を把握して、設備の稼働時間のコントロールや人員の再配置を実施。生産ライン全体の最適化を行い、生産性を向上させます。
工場のIoT化を実現するために解消すべき課題
ここまで解説したように工場のIoT化には数多くのメリットがあります。一方で、これを実現するには避けては通れない課題も存在します。以下に、代表的な3つの課題を紹介します。
①初期投資および維持管理にかかるコスト
工場のIoT化は、さまざまな情報を収集・分析することで実現します。そのため、センサーやタグなどのIoTデバイスやネットワーク環境の構築が必須となります。また、情報を可視化するためのツールも欠かせません。これらを導入して継続的に運用するには、相応の初期投資と維持管理費がかかります。
②IoT(IT)の知識をもつ人材の不足
IoTの技術を利用するためには、現場にはITについて専門的な知識をもつ人材が必要となります。しかし、慢性的にIT人材が不足している現状では、人材の採用や育成は簡単なことではありません。一方で、AIによる自動化やノーコード・ローコードツールの普及など、IT人材の不足をIT技術で補う流れも発生しています。
③セキュリティリスクへの懸念
ネットワークに接続する機器には、脆弱性などのセキュリティリスクが存在します。センサーやタグもネットワークに接続する機器である以上、そのリスクを完全に拭うことはできません。工場のIoT化を進める上では、セキュリティを意識した保守・運用を実施し、少しでもそのリスクを減らすよう心がける必要があります。
■Tips 独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」では、「IoTのセキュリティに関する調査報告書やガイドライン、海外動向等」を公開しています。 |
「まずはやってみる!」お手軽IoTのススメ
工場のIoT化の肝はデータ収集と活用です。収集・蓄積したデータの種類と量が多ければ多いほど、多角的かつ精度の高い分析が可能となります。つまり、実施が早ければ早いほど収集されるデータの種類と量が増えるので、迷っているのなら、まずは始めてみることをおすすめします。
もちろん、IoTの導入にはコストがかかります。また、いきなり工場全体にIoTを導入するのもハードルが高いと思われるでしょう。しかし、近年では、安価なIoTデバイスの登場やクラウドの利用により、低コストで導入可能なサービスが登場しています。
SCSKが提供するIoTサービス「CollaboView」は、必要な機器はすべて貸し出しとなり、特殊な工事や機材の準備は一切不要です。短期間かつスモールスタートで、工場のIoT化を始めることが可能です。また、CollaboViewの管理・運用ツールは非常に操作が簡単なため、専門的なITの知識がない方でもすぐに利用ができます。IoTによって懸念されるセキュリティリスクに関しても、経験豊富なSCSKがサポートします。
まずは、小規模のサービスからIoTを導入して、その可能性をぜひ体験してみてください。
参考
「スマートファクトリーロードマップ〜第4次産業⾰命に対応したものづくりの実現に向けて~」
https://www.chubu.meti.go.jp/b21jisedai/report/smart_factory_roadmap/roadmap.pdf
DIGITALX
「いよいよ最終週、”欧州の凄い製造DX”を集めた「Industrial Transformation Day」」
https://dcross.impress.co.jp/docs/news/003371.html